トウキョウダルマガエル
アカガエル科 トノサマガエル属 Pelophylax porosus porosus (Cope, 1868)
メス、栃木県 オス、千葉県 | ||||||
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卵 ・ オタマ | 鳴 き 声 | 文献 ・ 資料 | 写 真 |
関東にはトノサマガエルおらずかわりに本種が分布するので、関東で一般に「殿様ガエル」と呼んでいるのはこのカエルということになります。西日本に棲むダルマガエルとは亜種関係にあります。トノサマガエルとダルマガエルの中間のような形態をしています。足がトノサマガエルよりも短い。背中には小さなミミズ状の細長い隆起が散在し、背側線(鼻先から瞼(まぶた)を通ってお尻まで続く線模様)はトノサマガエルほどハッキリしない個体が多いようです。類似種との区別はトノサマガエルの項を参照。
分布
本州の関東から仙台にかけての地域と信濃川流域、トノサマガエルの分布の空白地を埋めるように分布しているが、新潟や長野などの一部地域で分布が重なる
生態
トノサマガエルとほぼ同じ。
生息場所
平地や低い丘陵地の水田や周囲の小川、池、湿地などに生息。
繁殖
繁殖は4月下旬から7月におよび、同一繁殖期間中に複数回産卵する(芹沢・芹沢、1990)と報告されているが、確かな証拠はありません(前田・松井、1999)。オスは左右に一対の鳴嚢を持ち、メイティングコールを発しながらメスを待ちます。メスの一腹中の完熟卵数は約800-2800個(Togane et al., 2009)で、卵径は1.3-1.9mm(前田・松井、1999)です。発生段階は岩澤・森田(1980)により25段階に区分され、受精から変態までの平均日数は73日です。
大きさ・色
体長は雄で35~75mm、雌で45~85mm。雌雄の体色はそれほど差はありません。全体が緑色から金色または灰暗色を基調とし背中の中央に1本の緑色や黄色の縦縞を持ちます。この縦縞は途中で細くなったり途切れることもあります。
保全情報
- 環境省レッドリスト カテゴリー
- 準絶滅危惧(2006) → 準絶滅危惧(2012) → 準絶滅危惧(2015) → 準絶滅危惧(2017) → 準絶滅危惧(2018) → 準絶滅危惧(2019) → 準絶滅危惧(2020)
各県のレッドデータ情報
各県のレッドリストカテゴリーは、制定当時の環境省カテゴリーと同等の場合はそのままのカテゴリー名で書いています。
○はその県に生息している、---は生息していないことを示します。
*は、県独自カテゴリーを示します。
カテゴリ | その他 | |||
北海道 | ブルーリストA(2004) → ブルーリストA3(2010) → ブルーリストA3**(2019) | **北海道の外来種リスト | ||
青森県 | --- | |||
岩手県 | 情報不足(2001) → D*(2016) | *C(準絶滅危惧)に準ずる種 | ||
宮城県 | 準絶滅危惧(2001) → 準絶滅危惧(2013)→ 準絶滅危惧(2016)→ 準絶滅危惧(2021) | |||
秋田県 | --- | |||
山形県 | --- | |||
福島県 | 未評価*(2003) → 準絶滅危惧(2017)→ 準絶滅危惧(2018)→ 準絶滅危惧(2019) | |||
茨城県 | カテゴリーなし(2000) → 情報不足1 注目種*(2016) | * | ||
栃木県 | 準絶滅危惧(2005) → 準絶滅危惧(2011)→準絶滅危惧(2018) | |||
群馬県 | 絶滅危惧I類(2002) → 絶滅危惧II類(2012) → 絶滅危惧II類(2022) | |||
埼玉県 | カテゴリーなし(1996) → 準絶滅危惧(2002) → 準絶滅危惧(2008) → 準絶滅危惧1型*(2018) | |||
千葉県 | 絶滅危惧IB類(2000) →絶滅危惧IB類(2006) → 絶滅危惧IB類(2011) → 絶滅危惧IB類(2019) | 県独自のカテゴリ | ||
東京都(区部) | B(危急種)*(1998) → 絶滅危惧IA類(2010) → 絶滅危惧IA類(2021) | |||
東京都(北多摩) | C(希少種)*(1998) → 絶滅危惧IB類(2010) → 絶滅危惧IA類(2021) | |||
東京都(南多摩) | C(希少種)*(1998) → 絶滅危惧IB類(2010) → 絶滅危惧IB類(2021) | |||
東京都(西多摩) | C(希少種)*(1998) → 絶滅危惧II類(2010) → 絶滅危惧IB類(2021) | |||
東京都(本土部) | 絶滅危惧IB類(2021) | |||
神奈川県 | 減少種*(1995) → 絶滅危惧II類(2006) | |||
新潟県 | カテゴリーなし(2001) → 絶滅危惧II類(2016) | |||
富山県 | --- | |||
石川県 | --- | |||
福井県 | --- | |||
山梨県 | --- | |||
長野県 | カテゴリーなし(2004) → 絶滅危惧II類(2015) | |||
岐阜県 | --- | |||
静岡県 | --- | |||
愛知県 | --- | |||
三重県 | --- | |||
滋賀県 | --- | |||
京都府 | --- | |||
大阪府 | --- | |||
兵庫県 | --- | |||
奈良県 | --- | |||
和歌山県 | --- | |||
鳥取県 | --- | |||
島根県 | --- | |||
岡山県 | --- | |||
広島県 | --- | |||
山口県 | --- | |||
徳島県 | --- | |||
香川県 | --- | |||
愛媛県 | --- | |||
高知県 | --- | |||
福岡県 | --- | |||
佐賀県 | --- | |||
長崎県 | --- | |||
熊本県 | --- | |||
大分県 | --- | |||
宮崎県 | --- | |||
鹿児島県 | --- | |||
沖縄県 | --- |
ハペ文化
地方名
-
ハペ文化
-
その他
旧学名:Rana porosa
書籍
- 日本爬虫両類類学会編, 2021, 新日本両生爬虫類図鑑, サンライズ出版株式会社
- 関慎太郎, 2021, 野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版, 緑書房, 東京
- カエル探偵団編, 2020, 見つけて検索!日本のカエルフィールドガイド, 文一総合出版, 東京
- 松井正文・前田憲男, 2018, 日本産カエル大鑑, 文一総合出版, 東京
- 松井正文, 2016, ネイチャーウォッチングガイドブック日本のカエル, 誠文堂新光社, 東京
- 関慎太郎, 2016, 野外観察のための日本産両生類図鑑, 緑書房, 東京
- 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎, 2002, 決定版日本の爬虫両生類, 平凡社, 東京
- 前田憲男・松井正文, 1999, 改訂版日本カエル図鑑, 文一総合出版, 東京
学術論文
著者, 発行年, 論文タイトル, ジャーナル名, 巻号, ページ原記載(1868年)
- Cope, E. D. 1868. An examination of the Reptilia and Batrachia obtained by the Orton Expedition to Equador and the Upper Amazon, with notes on other species. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia 20: 96–140.
最新記載(2007年)
- Che, J., J.-f. Pang, H. Zhao, G.-f. Wu, E.-m. Zhao, and Y.-p. Zhang. 2007. Phylogeny of Raninae (Anura: Ranidae) inferred from mitochondrial and nuclear sequences. Molecular Phylogenetics and Evolution 43: 1–13.
- 更科美帆・吉田剛司.2015.北海道における4種の国内外来カエルの捕食による影響:胃重要度指数割合からの把握.保全生態学研究 20(1):15-26.
- 大澤啓志.2014.孤立的な水田におけるトウキョウダルマガエルの畦畔利用から見る生息要因についての考察.農村計画学会誌 33:293-298
- Komaki, S., Kurabayashi, A., Islam, M. M., Tojo, K. and Sumida, M. 2012. Distributional change and epidemic introgression in overlapping areas of Japanese pond frog species over 30 years. Zoological science 29(6):351-358.
- 山本康仁・千賀裕太郎.2012.都市化により分断化された水田におけるトウキョウダルマガエル Rana porosa porosa の分布と環境要因の関係.保全生態学研究 17(2):175-184.
- 岩田芳美・江崎佳章・佐々木聖一郎.2011.幸区のトウキョウダルマガエル.第7次 川崎市自然環境調査報告:151.
- 高橋大輔・丸野内淳介・井出悠生.2010.新規の里山林内水域に移入したトウキョウダルマガエルとアズマヒキガエル.爬虫両棲類学会報 2010(2):121-124.
- 渡部恵司・森淳・小出水規行・竹村武士・朴明洙.2011.コンクリート水路に転落したカエル類の簡易な脱出工の試作と効果の検証.農業農村工学会論文集79(3):215-221.
- 戸金大・福山欣司・倉本宣.2010.テレメトリー法を用いたトウキョウダルマガエルの谷戸田における移動追跡.爬虫両棲類学会報 2010(1):1-10.
- Togane, D., Fukuyama, K. and Kuramoto, N. 2009.Size and age at sexual maturity of female Rana porosa porosa in valley bottoms in Machida city,Tokyo,Japan.Current Herpetology 28(2):71-77.
- 渡部恵司・森淳・小出水規行・竹村武士.2009.農業水路に転落したカエル類の脱出対策に関する基礎的実験:トウキョウダルマガエルが脱出しやすいスロープの傾斜角及び水路の水理条件.農業農村工学会論文集 77(5):483-489.
- 伊藤寿茂.2007.U字溝用水路内で越冬するトウキョウダルマガエルの観察例.爬虫両棲類学会報 2007(2):127-128.
- 大澤啓志・島田正文・勝野武彦.2005.平地水田地帯の畦畔利用におけるトウキョウダルマガエルの個体数密度を規定する要因.農村計画学会誌 24(2):91-102.
- 戸金大・福山欣司・倉本宣.2005.谷戸田におけるトウキョウダルマガエルの体長組成と成長.爬虫両棲類学会報 2005(1):13-22.
- 小野亨・城所隆・小山淳.2004.ニホンアマガエルとトウキョウダルマガエルのツマグロヨコバイに対する捕食量の実験的解析.北日本病害虫研究会報 2004(55):176-179.
- 大澤啓志・片野準也・勝野武彦.2003.広水田域としての散居集落水田の水路におけるトウキョウダルマガエルの生息状況.農村計画論文集 5:7-12.
- 斎藤和範・八谷和彦.2002.北海道における移入ガエルの動向-石見沢市近郊におけるトウキョウダルマガエルの分布状況-.野生動物保護 7(2):67-74.
- 芹沢孝子・芹沢俊介.1990.トノサマガエル-ダルマガエル複合群の繁殖様式Ⅲ.トウキョウダルマガエルの性成熟と産卵.爬虫両棲類学雑誌 13(3):70-79.
- Shimoyama,R.1989.Breeding ecology of a Japanese pond frog,Rana p.porosa.Current Herpetology in East Asia:323-333.
- 岩澤久彰・森田由美子.1980.トウキョウダルマガエルの発生段階.動物学雑誌 89:65-75.
ウェブ・メディアなど
- ウェブ名称など, URL
- 新聞など媒体名, 発行年月日, 記事見出し, (URL)
その他
- その他
2022-09-03