世界の両生類の現状

世界にはおよそ6500種ほどの両生類が生息しています。2010年のIUCNの集計によると、そのうちの3分の1が絶滅の危機にあると考えられいます。両生類の減少は急ピッチで、ある推計によると1980年以降だけでも少なくとも9種、おそらく122種が絶滅したと考えられています。

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全体の30%が絶滅の危機にあるというのは、他の動物と比べても突出しています。たとえば、絶滅危惧種の比率は、ほ乳類では21%、鳥類では13%なのです。しかも、両生類の場合は、全体の15%は研究が十分でないなどの理由により未評価になっています。おそらくこの中にも多くの絶滅危惧種がいると推定されます。

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なぜ両生類は減っているのか?

 

環境のカナリア

両生類は環境の変化に弱い生物と言われています。それは、①陸と水辺の両方の生息環境を必要とすること、②湿度や気温に敏感な皮膚を持つこと、③皮膚が薄く、有害物質が侵入しやすいこと、③殻のない卵は干上がりや凍結、水質汚染の影響を受けやすいこと、などの理由からです。陸と水との間を行き来する生活を続けてきた両生類は、陸と水の両方の環境変化に影響されるのです。こうした特徴から、両生類は地球温暖化の最初の犠牲者になるのではないかと言われ、炭坑のカナリヤに準えて「環境のカナリヤ」と呼ばれることもあります。

 

 

減少の要因

 両生類が減少する原因は様々だと考えられています。種によっても場所によってもその原因は異なると考えられています。しかし、これまので研究から世界で起こっている両生類の減少には大きく分けると以下の6つの原因が関与しているのではないかと言われています。すなわち、生息地の破壊と改変(Habitat Destruction and Alternation)、気候変動(Global Climate Change)、化学物質汚染(Chemical Contamination)、病気や病原体(Disease and Pathogens)、外来生物(Invasive Species)、商業利用(Commercial Exploitation)です。

破壊と改変というのは、言うまでもなく両生類の生息地を壊してしまうことです。破壊とは生息地そのものを開発などで消滅させてしまうことです。田んぼや林が住宅地に変わってしまうのはこれに当たります。改変とは生息地としては存在しているものの、環境が変化してしまい実際には棲めなくなってしまうことです。たとえば、田んぼの水路を三面張りのコンクリート水路に変えてしまうと、カエルは干からびたり流されたりして死んでしまうことがあります。

気候変動:地球温暖化に伴う様々な気候変化のことです。両生類は乾いた環境が苦手です。また、気温が上がりすぎると体温調整が難しくなることもあります。温度と湿度の微妙なバランスの中で生きている両生類は気候変動に弱い動物です。

化学物質汚染:両生類は、薄い皮膚を通して酸素や水を取り入れているので、有害な化学物資が環境に撒かれると、たとえそれが口に入らないとしても、皮膚から簡単に取り込んでしまいます。また、水田などの農地で暮らす両生類も多いため、農薬の被害も問題となります。

病気や病原体:病気も両生類が減少する大きな原因と言われています。人間や物が世界規模で移動するようになった影響で、未知の病原体による感染症が世界規模で広がるようになりました。特に影響の大きな伝染病はカエルツボカビ症とラナウイルス感染症です。オーストラリアとコスタリカやパナマで深刻な影響がでています。オレンジヒキガエルやカモノハシガエルを含め、何種類かのカエルがカエルツボカビ症で絶滅したと考えられています。2006年に日本でも確認され、大きな問題となりました。しかし、日本では両生類の絶滅は起こりませんでした。これまでの研究から、カエルツボカビはアジア起源の病原体で、日本の両生類は耐性があるのではないかと推測されています。ラナウイルスは北米やヨーロッパでカエル類の減少を引き越していると言われています。最近、日本でもウシガエルの上陸直前のオタマジャクシが大量死する現象が見つかっています。

外来生物:伝染病と同じように世界規模で物資が移動するようになったことで起こっています。2005年には国内でも外来生物法が制定され、かなり厳しい罰則を伴った対策が取られるようになりました。マングースやアライグマによる捕食は両生類に深刻な影響を与えています。また、オオキヒガエルやシロアゴガエル、ウシガエルなどのように特定外来生物の指定を受けている両生類も存在します。

商業利用:両生類を買ったり売ったりすることで引き起こされる問題です。両生類が商業利用によって減少するケースは2つあります。1つは、食用として野外に生息するカエルが大量に捕獲されるケースです。特に東南アジアや中国で深刻と言われています。毎年数億匹のカエルが食用として捕獲されていると言われています。もう1つはペットトレイドです。取引される数は食用と比べて少ないのですが、問題は取引される両生類が希少種である場合が多く、少ない捕獲でも大きな影響があると考えられています。